ラブ・レター

posted in: 家族の肖像 | 0

夏がくればそれだけでこころがウキウキします
あなたあての短い夏の便りは
もう書き終えたけれど今年は届けることができません
どうして暮らしていますか
朝の食事はきちんと食べていますか
仕事をぐちる口もとはきっとひきしまっていますか
土曜日の夜にはいつもくりだしていた
梅田のベコーのママは元気でしょうか

エナメルのひかる靴はいてネクタイしめて
あなたと酒を飲みにいきたい

電話もずいぶんとだえて声も聞けないけれど
海の波に照りつけるおひさまの輝きに似たあなたのひとみは
まだあの頃のようですか

あなたに打ち明けるわたしのこころは
買ったばかりのスーツのようにぎこちないけれど
遠いところでじっとあなたを見つめています

旅先の喫茶店で紅茶を飲みながら窓際にすわって
あさの会話をたのしむ人達を見つめています
絵葉書にぴんとした切手をはってあなたに届けたい

しかくな葉書のまんなかに
元気でと書くことだけが
精一杯のわたしのあかんたれ

コメントを残す