子供のまぶたが割れた
ぱっくりと口を開け
血がにじんで
白い扉に小さい模様を描いた
二歳の誕生日を縫い合わす
ふたつぶんの針が父親のまぶたにも刺さっている
同じ場所に同じ傷
ますますそっくりな複製ができあがってゆく
そうするとまた息子の喜丈も
なかなか書けない詩に
悩まされる楽しみを
知るのだろうか
こっそりと庭に穴を掘って
昨夜のうちに作っておいた
火薬づめのプラスティックに火をつけて
大けがをするのだろうか
美しい娘さんに
片思いをして
夜
からだが熱くなるのを
覚えるのかしらん
いえいえ
彼はきっと自身に似合いの羽根と宇宙服を身につけて
空に登ったり高い階段からひらりと飛び降りて
父親の目のまでくるりと宙返りをうって
どんなもんだいという顔をしてみせるのだろう
そんな高い階段も気持ちのいい空も持たなかった
父親達は
彼らがそんなたわいのないことに
キャッキャしているのを眺めながら
雲に腰掛けて
したり顔に頬杖ついて
ため息をついていることに
なるのかもしれない
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